20XX年〇月△日(休職から8日目)
会社からは誰からも連絡が来ない。
僕への連絡厳禁と通達が出たと噂で聞いた。
10年以上も努めたんだ。
一抹の寂しさがある。
でも、おかげで忘れやすい。
いや、過去に戻らなくなったというべきだろうか。
今を生きているはずなのに、気付けば意識だけあの頃を追体験している。
最近は触れる温度,香り,明るさ、
今この瞬間を感じるようになってきた。
少しずつだけど、時間が解決してくれる。
心境変化
次のホテルに到着。
少し前まで比較的栄えた街並みだったのに、
森の中の洋館に迷い込んだようだった。
荷物を置いて早速サウナヘ。
身体を洗い、
湯船に浸かった後サウナで温まり、
水風呂で冷やして休憩する。
僕のお決まりのルーティーンだ。
先月も同じルーティーンだった。
その時は何度も同じ言葉が聞こえてきた。
「なんでやってなかったの!?」
あれはどうしようもなかったんだ。。。
熱いも冷たいも何も感じない。
いま休憩してる。先月とは違う。
風が気持ちいい。
足元のお湯は温かい。
吸う空気は冷たくて、吐く息は温かい。
何も思考はない。
あるのは感覚だけ。
そういえばいつぶりだろう。
こうやって整ったのは。
朝食はご当地食材らしい。
パンを取り、ひと口は小さく、咀嚼は多い。
今までなら時間効率的にひと口で飲み込んでいただろう。
時間がかかる。
窓を見る。
小鳥の親子がさえずっていた。
いつぶりだろう。
時間を忘れて食事をするのは。
15分で食べなくていいんだ。
何も考えずぼぉーっとする。
あるのは時が止まる感覚だけ。
すべてを手放して、空っぽになって、
初めて気付いた気がした。
旅も終盤へ
今度の街は凄く静かだった。
人も疎らで、日が暮れると暗くて見えにくい。
最果てって、言葉が浮かんだ。
まるで世間に見放された気分になり不安になる。
気付けば旅も終盤だ。
何か先週の自分より成長できてるだろうか?
答えはNOだ。
僕のキャリアは一度死んだ。
ただひとつだけ。
「あの料理が美味しかった!」
「あの景色が綺麗だった」
「あのサウナが最高だった!」
よく覚えている。
先月、仕事と繋げて行った旅行は殆ど何も覚えていない。
「仕事のことは忘れてください。」
結局忘れることはできなかったけど、
過去に囚われる頻度は減らせたかな?
これでいい。
まずはこれでいい。
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