夢だった友との昼飲み

休職日記(休職の心得)

20XX年〇月△日(休職から17日目)

今までは忙しくて昼飲みなんて出来なかった。
平日は朝から夜11時半まで仕事で、昼休憩なんてひどい時は15分だけ。
休日も仕事が終わらずサービス残業。

仕事に追われ働き詰めだったから、せっかく友達に誘われても断らざるを得ないこともあった。

休職して、久しぶりに昼間から友人とノープランでのんびり会える。
昼間から飲み会なんて人生初かもしれない。
今までの人生とのギャップで、いろいろ考えさせられた。

憧れはすぐそこにあったのに。

今日は友人に会う予定。
先週まで7泊8日の長期旅行に行っていたので、そのお土産を渡すのがきっかけだ。
旅行前、休職したばかりの頃に凄く心配してくれた友人に、せめてもの感謝を伝えたかった。

それにしても、30代にして1週間も旅行に行けるとは思っていなかった。
シニアになるまで叶わないと思っていたのに、休職しただけでこんなに簡単に叶うとは。

友人と待ち合わせ、お店探し。
ある程度アタリはつけていたが、その店は人気店で混んでいた。
幸いなことに友人の一人が早めに店に行ってくれていて、待たずに入れた。
友人は既に飲み始めていた。

時間は14時。
ビールを頼んで乾杯!
隣の卓を見ると、オジサンたちが笑顔で酒盛り中。
営業で外回りや接待で見かけたことある光景。
時間も気にせず、世間では汗水流して働いている中、仲間と笑顔で暴飲暴食。
僕には人生の勝ち組に見え、いつか僕もああやって友達と時間を気にせず笑い合いたいと思っていた。

いいな~っと思っていた。
でも、ふと我に返ると、自分もすでに今、同じように昼飲みしていることに気付いた。
目の前には親友たち。
僕にとって手の届かないくらい遠い憧れだったのに、
過労で倒れ休職したら、こんなに簡単に憧れが叶うなんて。
幸せは気付いていないだけで、すぐ目の前にあるのかもしれない。

本当に大切な事

友人と美味い料理に旨い酒で時間を潰す。
特に予定があるわけでもない。
特にネタとなる話題があるわけでもない。
ただのんびりとマイペースに友人と時間を共有した。

こうやって接待するわけでもなく、
利害も損得も無いのに一緒に過ごしてくれるって、本当に貴重なことだよな。
そう考えると、ふと気付くことがある。

本当に大切なものって、休職してからも会ってくれる人たちだよな。
僕はいったい、今まで何に時間を費やしてきたのだろう。

休職前、時間も労力も費やしたモノ。
今では全く連絡も音沙汰もない。
あれだけ尽くした営業部長。
休職前は「お前を頼りにしている」とフレンドリーに接してくれた。
僕も、どれだけ仕事を押し付けられようと、期待に応えようと、他より優先して頑張った。
それなのに、いざ休職と決まったら。

他に言うことは無いのかって聞いてんだよ!

二人だけの引継ぎの面談で、怒鳴られ、それ以降は一切関りが無い。
僕が積み上げようとしたものは、もとから蜃気楼のように実体が無かったみたいだ。

それに対して、友人たちは真逆だった。
仕事が忙しすぎて、友人たちの連絡にも丁寧に対応できなかった。
僕はそう感じていて罪悪感があった。
ときには断るしかないことも多々あったと思う。
それなのに、友人たちはいつも僕を心配してくれた。
いざ休職したら、真っ先に会う約束をしてくれ、
事あるごとに連絡してくれたり、会ってくれたり、話し相手になってくれた。

仕事の時に築き上げたモノは、たいていは仕事から離れた途端に消えてしまうものだ。
今回休職してハッキリ体験できた。
休職して、何も持たないハダカ一つのタダのおじさんになっても、
気にかけて話し相手になってくれる存在。
そういう存在こそ「宝物」と言えるもので、最も優先すべき存在。
これからは「宝物」を間違えずに大切にしていきたいと思う。

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