20XX年〇月△日(休職する9日前)
「オーバーワークによる適応障害ですね」
お医者様が言った。
(そんなことはいいから、
早く仕事に戻らせてくれ。
時間がないんだ。)
どこか他人事に聞いていた。
「診断書にこう書きますが、宜しいですね?」
パソコンを見せながら、続けてお医者様が確認してくる。
僕は矢継ぎ早に答えた。
「いいですよ。でも私は休みませんからね。」
受付で診断書を貰い、会計を済ませて足早に駅に向かう。
この時僕は分かっていなかった。
これが何を意味するのかを。
待合室にて
午前11時20分、無事到着。
20分前まで取引先とオンライン商談をしていた。
よく遅刻しなかったものだ。
呼ばれるまであと10分もあるのか。
「よし、仕事をしよう」
これが待合室のベンチに座る僕のイメージ。
カタカタ音を鳴らして、今思えば迷惑だっただろう。
もう誰もいないけど、ごめんなさいm(–)m
この時は必死だった。
(もうこれ以上、誰にも迷惑かけたくない)
(ここまでやってトラブルになったら、その時はもう...)
「サトウサーン、お入りくださーい。」
また嫌なこと考えていた。ちょうどいい。
せっかくだし話を聞いてもらおう。
初めての診察
「サトウサン、こんにちは」
穏やかな佇まいのお医者様だった。
「人事部長様から予約のお電話頂きましたが、今日はどうされましたか?」
まずは封筒を差し出す。
僕「産業医から先生に渡すようにと」
産業医とは労働者の健康を保持するため助言・指導を行う医師のことだ。
詳しくは「産業医とは?」をご覧ください。
当社には保健室があり、そこでは保険医と産業医の二人にお会いすることが多かった。
お医者様「拝読しました。ではいくつか教えてください。」
病院には何度か行ったことがある。
歯科・眼科・耳鼻科・内科・etc…
でも、今回の問診は初めての経験だった。
「生まれはどちらですか?」
「ご家族のお話を教えてください。」
「高校時代の部活や友人関係は?」
「社会人になって一番苦労したことは?」
まるでテレビで見るインタビューのようだ。
高校生以降、初めて自分が主人公で話を聞いてもらった気がする。
お医者様に素直に話すことが良かったんだろう。
「お話しした限り、客観的に会話できていますので、単純に仕事量が多すぎることが問題なのでしょう。」
お医者様がパソコンを打ち込む。
『診断書:~。3ヶ月の休養推奨。』と。
帰社。そして翌々日
営業部長と人事部長にはチャットで報告。
「経過観察となりました。」
診断書は貰ったが、どうせ変わらないだろう。
今まで何度も営業部長には相談してきた。
「お前ならできる!お前しかいないんだ!」
・・・
とりあえず診断書は保健室に持っていくか。
しかし翌々日、事態は一変する
人事部長から電話があった。
声のトーンが低い。
「サトウサン、経過観察って聞いたけど、話が違うじゃないか」
・・・いやいや、また次回診察って言われたんだから、経過観察でしょ?
そう思うのも束の間。
「診断書貰ったでしょ?営業部長には話してあります。1週間で引継ぎ後、すぐ休職しましょう。」
今までと状況が変わり過ぎて、暫く立ち尽くしていた。
今日の気づき
後日保険医に聞いたところ、状況が分かった。
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産業医が診断書を見るなり、血相を変えて人事部長と営業部長を呼び出した。
「診断書に3ヶ月休養推奨と書いてあります。明日から即時休ませるべきです。」
案の定、営業部長と人事部長は猛抗議したらしい。
しかし次の一言で1週間後から休職させると決定したようだ。
「診断書があるんですよ?このまま働かせて何かあったら、あなたたち責任取れるんですか?」
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診断書にはそれだけの効力があるようだ。
ネット検索で調べると下記のように書いてあった。
診断書は、患者さんの状態を診た医師が、専門的な見地から見解を出すものです。心療内科や精神科で扱われる診断書は、それ自体に公的な意味をもつため、企業側は安全配慮義務に従う必要があります。
ひだまりこころクリニックブログ引用
今まで心理的障壁を取り除けたとしても、
会社・上司が休ませてくれないだろうと思っていた。
もし会社や上司からの指示で休めない悩みを抱えていた時には、
こういった方法もあることが勉強になった。
診断書の効力自体もそうだが、
それ以上に重要な気づきは、
「独りで悩まず、第三者に相談すること」
そうすれば、例えば今まで2つしか選択肢がなかったのが、
3つ目・4つ目の新しい選択肢が得られるかもしれない
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