自己世界の崩壊

休職日記(休職の心得)

20XX年〇月△日(休職から290日目)

今日はカウンセリングの日。
ここ最近は順調だった。
少し前に焦燥感に襲われ辛い時期もあったけど、
「ゆっくり動作する」を意識してから落ち着いている。
また、前回のカウンセリングで宿題だった下記2点も取り組んだおかげで、
かなり自己否定感や自責が減り精神的に楽になった。

  • 「出来なかった自分を許す」を意識する
  • 「気が楽だなぁ~」と思ったことをする

上記を報告すると、カウンセラーは苦しかった時の心情を深堀りし始めた。
カウンセラーの質問によって、思わぬ過去の話にまで至った。
その話をした時にカウンセラーに言われた。

世界の崩壊だね・・

カウンセラーは造語だと言っていたが、
そっか、あれは自分の世界の崩壊だったのか。

学生時代の何気ない会話

思えば僕は物心つく時から両親にこう言われて育てられた。

人にやさしくしなさい。
暴力はいけません。

小さい時からカラダが大きかったからだろう。
僕の中で「やさしくする」が絶対的規律となっていた。

学生時代。
僕はいつも複数人の友人グループでつるんでいた。
あくまで主観だが、この時は比較的リア充だったと自覚している。
自己肯定感は高かったし、自分に自信があった。
友人たちとも心から楽しく過ごしていたし、
何ならリーダーシップも発揮していたと思う。

あるありふれた一場面。
グループの何人かが補習か何かで居残りになっており、
僕を含めた何人かで待っていた。
すると『彼』が言い始めた。

あ~もう帰りてぇ~!
もういいよ!先に帰ろうぜ!

『彼』はどちらかというと自由奔放なところがあった。
テンションが上がり過ぎるとやり過ぎてしまうタイプ。
だから度々「なぜそんなことを言ってしまうの?」と思うことがあった。

いや、僕は待つよ。
僕が同じ立場だったら、先に帰られてたら悲しいと思うから。

自分がやられたら嫌なことを人にしない。
これは当たり前のこと。
僕の中で絶対的秩序だった。
すると、『彼』は言った。

サトウサンそういうのもういいよ。
そうやって偽善者ぶるのやめなよwww

あまりにショックで何も言えなかった。
その後のことはあまり覚えていない。
ただ、その言葉はずっと頭に回っていた。
「僕は偽善者だったのだろうか?」
そんなことは今まで一切考えたことが無かった。
そんな考え方もあるのか・・・。
ただ、この時はそれでも自分が正しいと頑なに信じており、
ただただショックを受けるだけで終わった。

急に喋れなくなった

それから1~2年が経過した時。
僕の中では衝撃的な事件が起きた。

『彼』が不登校になったのだ。
詳細は書けないが、『彼』が興奮し過ぎて思い切った行動をし過ぎてしまい、
それが学校で大事になってしまったのだ。
その時のバタバタで『彼』はショックを受けてしまい、
学校に来られなくなってしまった。

その知らせを聞いた時、グループのみんなの反応が驚きだった。

まあ、あいつは仕方ないよな。
前から色々問題あったし。
実はオレ、あいつのこと嫌だったんだよね~。
自業自得だよな。
『彼』とは一切関わらないようにしようぜ。

衝撃的で凄くショックだった。
たしかに『彼』には問題があった。
僕も嫌な思いをしたことはある。
でも、ずっとみんなで仲良く過ごしてきたじゃないか。
僕たち、友達じゃないか。
それなのに、不登校になったっていった瞬間、
こんなに簡単に関係を切っちゃうのか?

すると帰り道、僕の中で大きな変化が起きた。
今でも、その時のこと・心情を表現する適切な言葉が見つからない。
今まで積極的にココロから会話を楽しめていたのに、
なぜか何も言葉が出てこなくなった。
大好きな友達が話しかけてくれているのに、何も言葉が入ってこない。
喉が潰れたように声が出てこない。
その時の気まずい空気の帰り道を僕は忘れることは無いだろう。

それから僕の学生生活は一変した。
「何もしなければ誰も傷付かないし僕も傷付かない。」
「消極的な人の立場に立たなきゃダメだ」
そう思い、今までの友達とは疎遠になり、
気付けば友達だった人たちは僕を馬鹿にするようになっていた。
そして今まで関わることの無かった消極的な人たちまで、
僕に対して馬鹿にしてくるようになっていた。

それから社会人になるまで、僕は出来る限り目立たないように、何もしないように生きるようにしてきた。
それは最早無意識レベルで、それが義務だと信じていた。

世界の崩壊

うーん、自分の世界の崩壊ですね・・・

カウンセラーは今の話を聞いてこう言った。
自分が絶対的に信じていたことが崩れ去る時、
今までの全てを捨て去り、新しい自分を築き上げることらしい。

僕の場合、「人にやさしくする」という言葉を絶対的信念にしていた。
学生時代はあくまで僕目線での「やさしさ」だった。
でも、「やさしさ」は人によって中身が全然違う。
その人の立場に立たないと、本当の意味での「やさしさ」ではない。
『偽善』という言葉を浴びせられた時から、
僕の中で絶対的信念だった「やさしさ」が揺らぎ始め、
事件をきっかけに僕の世界は崩壊した。

サトウサンの辛さは独特です。
サトウサン自身の規範に苦しめられている。
例えどんなにお金や物資が豊かになっても、
その苦しさは変わらないでしょう。
自分の理想に苦しめられているのですから。
先進的な辛さかもしれませんね。

学生時代の苦しみ。
今現在の苦しみ。
それが繋がっている事。
その苦しみの名前と内容詳細。
それを始めて知ることができた気がする。

でも、今となっては後悔は無い。
だって、今は最高の友達や周囲の人に恵まれているから。
あの時苦しみ藻掻いてきたから、今があるから。
必要な事だったと思っている。

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