思い出を巡る

30代独身男の休職飯

20XX年〇月△日(休職から51日目)

今日は「やりたいことリスト」の1つを実現することにした。
それは「想い出の地を巡る」ことだ。

まだ新人だった頃。
当時担当していたお客様に連れてって貰った飲食店を巡ることにした。
当時は「世の中にこんな美味しい物があるのか!」と衝撃を受けた。
今でもその時の感動は良く覚えている。

あれから約10年。
あの時の感動を、もう一度思い出してみよう。

お客様オススメの焼肉屋

まずは焼肉屋へ。
ここはお客様の担当になったばかりの頃、お客様が連れてってくれた思い出の地。
僕にとって「いちばんおいしい焼肉屋」になった場所。

今思うと、なぜお客様は僕を歓迎してくれたのだろう。
当時は営業職ってそういうものなのかって思ったけど、
今思うとあれだけご馳走になり歓迎してもらったことは他になかなかなかった。
あれから仕事のたび飲みに行くようになり、領収書は交互に切ったっけ。

過去に領収書を精算した際の店名を微かに覚えていたので、
それを頼りに調べてみることに。
なんとかあたりを付けて、向かってみた。

実際に店の前に着くと、思ったよりこじんまりしていた。
当時はもっと秘密の隠れ家って特別な場所に感じていたけど、
今独りで来ると、こんなものなんだな。

お店に入るとガラガラ。
あんなに美味しいのに、なぜ?
メニューを見るが、どれを食べたか思い出せない。
とりあえずカルビとロースを頼むことに。

実際に焼いて食べてみる。
普段はカルビばかり食べる僕。
まずはカルビから。
「あれ?こんなもんだっけ?」
焼肉きんぐとそんなに感動が変わらない。

次にロースを食べる。
普段あまり食べないが、店のオススメってことで食べてみた。

これ!これだ!
美味しい!
やっぱり人生でいちばんおいしい!

当時の感動が蘇った。
これだ!このロースだったんだ。
約10年たった今でもいちばん美味しかった。
感動は全く変わらない。

そういえば当時はお客様のオススメ通りに食べたから、何食べたか覚えてなかったんだ。
あれから約10年。
いろいろ接待して美味しいモノも食べてきたけど、
僕にとっては「ココ」がスタートだったんだよなぁ。
少し感慨深くなった。

お客様オススメの朝食

次に、別のお客様から勧められたお店へ。

ここらへんで美味しいお店と言えばココ!
ここの朝食がメチャクチャ美味しいんだよね~。
サトウサン、是非行ってみてよ!

そう言われてから時々行っていたが、
担当が外れ、より忙しくなってから来れていなかった。
僕にとっての思い出の地。
いざ入店。

ここの朝食セットも変わらず美味しい。
優雅な朝を過ごす。
当時はお客様が喜んで貰えることを第一主義に仕事に励んでいた。
時にはお客様と議論したり揉めたりもしたが、お客様も一緒になって一生懸命サービスを進めていったっけ。
そうした翌朝のこの店での朝食は、達成感と満足感があって格別だった。

あれから約10年。
新しく担当したお客様からは一方的に無理難題な要求をされていた。
社内事情で引き受けるしかなく、身を削りながら任務を熟す日々だった。

いまもお客様のためって気持ちで仕事をしている。
でも会社の都合と、お客様の都合に挟まれて、妥協と調整に四苦八苦する毎日だった。
あの時のような達成感は無くなっていた。

お客様の都合。会社の都合。自分の幸せ。
どうやってバランスを取れば良かったのだろう。
あの時のように、お互いに尊重し合える関係性と仕事は、どうやって取り戻せるのだろう。
答えが分からないまま、コーヒーを啜っていた。

思い出の地を巡って

当時の辛かったこと、楽しかったことを思い出した。
あの時も自分に出来る最善を尽くしてきた。
だから、いまの僕がある。
その時の初心を少し思い出せた気がした。

あの時よりは少し成長できたかな?
休職した今。
僕の人生は一度リセットされた。
ある意味、第二のスタートと言えるかもしれない。

また一歩ずつ、ここから始めよう。

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