20XX年〇月△日(休職から60日目)
休職してから会社関係から殆ど連絡が無くなった。
でも、ゼロではない。
なかには心配して連絡してくれる人もいる。
他部署の部長から連絡があった。
今度会わないかと言ってくれたのだ。
凄く嬉しい。
まだ気にかけてくれる人がいる。
休職して今まで会っていた人たちと会わなくなる。
恨んでいる人、陰口を叩く人もいるのだろう。
でも、一方で必ず認めてくれている人もいる。
過労で倒れるくらい頑張ったのだから。
分かってくれている人は必ずいる。
仕事仲間で一人でも理解者がいれば、何とかなる。
勇気を出して会うことにした
他部署の部長から会おうと連絡があった。
正直、楽しみと怖いが半々だった。
その部長は凄く良くしてくれていたのは感じていた。
でも、途中で休職し、プロジェクトを全う出来ず、被害を被っただろう。
あとは悪気なく傷つく可能性がある。
でも、会わないと何も始まらない気もした。
行動せず「もし〇〇だったら」と答えの出ない悩みを考え続けるくらいなら、
いっそ行動して次に進みたい。
もし傷付いた時には主治医とカウンセラーに相談しよう。
約2か月ぶりにお会いすると、会社でお会いしていた時より凄く気遣ってくれていることが分かった。
一挙手一投足、一言一言に配慮を感じられた。
それだけでもお会いして良かったと思えた。
組織変更に驚愕
こちらから会社の状況はどうか聞いてみた。
みんな無事だろうか?元気にしているだろうか?
もし僕のせいで誰か倒れてたらどうしよう。
不安だったけど、聞かなきゃ前に進めない。
みんな元気にやっているよ。安心して。
お前が休職してから、大きく組織変更があったんだ。
聞いてて驚いた。
まず営業課に中途採用で入ったうちの1名が他部署に異動となった。
わずか数か月での異動である。
本人と在職中話した時は、営業課の仕事に魅力を感じて転職したと聞いていた。
きっと本人からしたら不本意だろうと思う。
でも、個人的には少し肩の荷が下りた。
僕の仕事を背負わされる可能性が高かったからだ。
僕が休職する時、会社には幹部職(会社側)が引継ぎ、メンバーの業務負担が増えないよう配慮することを約束された。
しかし、営業部長は引継ぎ会議でエースを呼び出し、エースが自主的に引き継ぐように企てた。
既に約束を反故されたようなもんだ。
そして、営業部長と、最近一緒に仕事をしていて発言力を持つコンサルタントは、
その中途採用者を目の敵にしているように感じていた。
その方は主体性を持って仕事に励んでおり、営業部長とコンサルタントの面子や意図に沿わないことがあったからだ。
「もしかしたら責任と仕事だけ押し付けられるんじゃないだろうか」
そう不安に感じていた。
異動先の部長は詳しくないが、恐らく中途採用者の実力を買っているように思える。
そう思うと、個人的には安心感を得られた。
あと、営業課に3名異動されたよ。
そのうち2名は初めての営業事務担当。
おもに会議資料作成や売上分析を担うらしい。
驚愕だった。
会議資料作成や売上分析は僕が担っていた。
それ専任で2名異動してきたらしい。
僕は営業活動とプロジェクトリーダーと兼任でやっていた。
これだけでも3名分の仕事を僕はやっていたことになる。
もう1名はお前の穴埋めだろうな。
営業部長がサトウサンの代わりがいなくて困り果ててたからな。
白羽の矢が立ったんだろう。
もう1名は僕の後輩だった。
少し前まで営業課だったが、他部署に異動していた。
それがまた戻ってきたらしい。
プロジェクトリーダーは営業部長。
僕の顧客担当の一部を後輩が担うらしい。
これだけでも、さっきの営業事務と併せ、
僕は4名分の仕事を熟していたことになる。
さらに当時は大きなトラブルとプロジェクトも任されていた。
営業課以外の仕事も担わなければならなかった。
そりゃ潰れるよな。
我ながら自分を褒めたいと思った。
きっと理解者はいる
食事中、今度は僕の近況を説明した。
ゆっくり休めていること。
リワークデイケアで復職リハビリを受ける予定のこと。
「あの時」のことを悔やんでいるが、一方でどうしようもなかったこと。
するとその部長さんは言ってくれた。
あれは誰がやっても倒れていたよ。
営業課はプロパーがどんどん辞めて仕事が分かる人がいない状況。
ただでさえ過酷な状況なのに、事業で当時一番重要だったプロジェクトを急遽担当することになったんだから。
しかも、その前任者が辞めてて、引き継いだ営業課長は何も分かっていない。
お客様の方が理解しているのに、サトウサンはゼロから手を付けなきゃいけない。
そして営業部長は全くフォローせずに放置。
そりゃ誰だって病むよ。
有難かった。
部長さんも被害を被っただろうから責められてもおかしくないのに、
「サトウサンは悪くない」と言ってくれて心が軽くなった。
あれは営業部長が悪い。
まずプロパーがこれだけ辞めてて、サトウサンが休職しちゃう時点で、
営業部長に大きな責任があると思う。
休職する当時。
営業部長も営業課長もフォローなく、挙句には「いまはお前が担当なんだからお前の責任だ」と何も分からないまま責任を押し付けられた。
他部署の部長はそれを分かってくれていた。
それだけで救われた気分だった。
あんな状況でサトウサンが殆ど片付けてくれていたから、
あのあとはすんなり物事は進んだよ。
頑張ってくれてありがとな。
プロジェクトは無事成功したらしい。
休職する直前まで、残された皆の負担が少しでも減るように尽力した。
当時はホント、死んでもいいって思いながら死力を尽くした。
だから、部長さんにそう言って貰えて、思い残しが少し減った。
ちなみにお客様から新しい案件の話もあったんだけど、断ったよ。
社員1名が病んじゃうくらい大変だし、
そこまでしてやる必要があるのかって思ったんだろう。
お会いして良かった。
おかげで思い残しが減り、少し前に進めそうだ。
自死の覚悟で仕事に励んだけど、その結果として組織変更もあり少しでも改善されているようで、頑張った甲斐があった。
何より、「みんなのため」と思い頑張ってきたことを理解してくれている人がいる。
それだけで、明日も生きようって思えた。
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