20XX年〇月△日(休職する3日前)
既に休職することは決まっていた。
本当はもう休んでいるはずだったらしい。
今週中には休職開始予定だ。
モチベーションを保てるはずがなかった。
誰も助けてくれなかった。
上司は自分の身を守り、他部署は責任を追及し続けた。
気付けば頭を抱えて叫んでいた。
営業部長の判断
保健医から聞いた話だ。
僕が診断書を渡した後、産業医が直ぐに営業部長と人事部長を呼んだらしい。
診断書が出ています。
サトウサンは明日から休ませてください。
これで何かあったら責任取れますか?
営業部長が猛抗議したらしい。
今あいつがいなくなったら仕事が止まる。
サトウサンの代わりなんていないんだよ。
そんなすぐには休ませられない!
1週間だけ引継ぎの時間をくれ!
口論になったらしいが、産業医が折れたらしい。
こうして今も出社している。
営業部長と面談した。
お前のお客様は課長に引き継いで貰うから。
あとは課長と引継ぎをしてくれ。
お前が休むことは誰にも言うなよ。
大きなプロジェクトだけ部長が引き継ぐようだ。
だいたい片付けたから、2か月後には大きく成果として出てくる見込みだ。
箝口令が出ているので、誰にも相談できない。
お客様にも事情を説明できない。
僕が休めば、ここ2年で営業課の退職者・休職者が6名になる。
さすがに責任問題になるから余計なことを言われたくないのだろう。
とりあえず、課長のところに行くことにした。
課長との引継ぎ
課長のところに伺った。
話は聞いてる。
すべてのお客様の引き継ぎ書を今日中に作っておけ。
お客様や仕事は数え切れないほどある。
それを全て引き継ぎ書を作れという。
休職すると分かっているのに。
そんなの今日中に作るなんて無理に決まっている。
第一、課長が僕にお客様を引き継ぐ時は引き継ぎ書なんてなかったじゃないか。
「分からなかったら聞きに来い」だけだった。
聞きに行っても「俺には分からん」で殆ど終わりだった。
あと、来月以降のイベント準備はどうなっているんだ?
僕が担当する大口のお客様はイベントが多い。
6ヶ月後のイベントまで決まっていた。
ただ、今日明日の仕事が回らない状況だったので、まだ手付かずだった。
俺が引き継ぐんだ。
今日中にすべてダンドリ片付けとけ
6ヶ月先まで決まっているイベント準備を全て終わらせろということだった。
それができたらこんなことにはなっていない。
無慈悲な課長からの指示に目の前が真っ暗になった。
お前のせいでこんなことになったんだろ。
責任を果たせ。
あ、でもこれで残業はしなくていいからな。
出来る範囲でいいぞ。
俺に引き継がせるんだ。
筋を通してくれればいい。
パワハラといった責任追求されたくないから、
自己保身のための台詞と丸わかりだった。
でも負担は増やしたくないから、僕に罪の意識を持たせて自主的にやらせる狙いを感じる。
誰も助けてくれない。
・・・やるしかない。覚悟を決めた。
とどめの一撃
何とか今日中に大まかなイベントダンドリを終わらせた。
あとはもう無理だ。
怒られてもいい、あとは任せよう。
お客様からのクレーム処理は別の人がやってくれたから何とかなった。
あとで御礼を言おう。
携帯を見た。品質保証部長からメールだ。
なぜこんなことになっているんですか?
こんな短納期で調査できるわけないでしょう。
営業担当の責任です。
どうにかしなさい。
代わりにやってくれた人が勘違いして対応したようだった。
でも、依頼したのは僕だ。
責任は僕にある。
でも、課長からの指示をこなすので、どうしても無理だった。
メールには営業部長も課長も入っていたが、何も反応はなかった。
あぁ、品質保証部に説明と謝罪に行かなきゃ。
すると営業部長から電話があった。
あぁ、良かった。
フォローの電話だ。
さすがにこれ以上酷い仕打ちはないだろう。
あぁサトウサン、
引継ぎ終わらないと事業がマズイから、
それまで休むの待ってくれない?
あと一週間くらい伸ばせないかなぁ?
それで電話は切れた。
僕の中で何かが壊れた。
あぁー!あっぁあぁぁっぁー!
気付けばその場で蹲り叫んでいた。
発狂していた。
別の建物へ移動中だったので、周辺には誰もいなかった。
会社の殆どの人は、僕が休職することを、未だ知らない。
お客様にも事情を説明できず、今後の仕事について曖昧なことしか言えなかった。
悪いことは何もしていないのに、
罪悪感で辛かった。
唯一知っている営業部長と課長は助けてくれなかった。
誰も助けてくれなかった。
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