独り地元町をブラつく

休職日記(休職の心得)

20XX年〇月△日(休職から57日目)

休職してもうすぐ2ヶ月が経つ。
主治医からは「3ヶ月休職推奨」と言われているから、
予定通りならあと1ヶ月で戻ることになる。

時間は有限だ。
なんだかんだであと1ヶ月しかない。
そのうえ、復職したら、もうみんなと同じ顔して「時間がないからできない」ということはできない。

やりたいことをやらなくちゃ。
そういえば、地元の街をぶらつくことってなかったな。
ちょっとやってみたかったことあるし、今日は町をぶらつこう。

綺麗な街並みを眺めるゆとり

休職する前は、こうやって近所をのんびり歩く時間なんてなかったなぁ。
普段全く使わない通り。
使ったところで、最寄り駅までは遠回りだし、使う理由がない。

目的もなく散策するので、初めて通ってみた。
近くにこんなに綺麗な風景があったんだ。
本当に僕は、仕事だけの人生を送っていたんだなぁ。
少し違うところを歩けば、世界はこんなに広いって視覚できるんだ。

幸せってなんだろう。
仕事に邁進して、人として成長させてもらったことは幸せな事だと思う。
でも、数か月前の自分って幸せだったかな。
「これでダメなら死んで償おう」って覚悟を固めていて僕は幸せだったかなぁ。

幸せって、形は無いのかもしれない。
だから、自分でデザインして形作るゆとりが必要だったんだ。
休職したことに罪悪感みたいな仄暗い気持ちがあったけど、
これは神様からの思し召しなのかもしれない。
必要なことだったのかもしれない。

別世界の贅沢な時間

気付けば駅前までたどり着いていた。
視界にずっと気になっていた飲食店。
今まで入る機会がなかった。
常連のみしか受け付けなく感じる入口扉の趣き。
そして早い閉店時間。

さっきお昼は済ませちゃったけど、今しか時間はないんだ。
入ってみよう。
「いらっしゃい。そこのカウンターどうぞ」
少しぶっきらぼうに感じる対応。
席に着くと、隣ではおじさんがとっくりを傾けていた。
まだ子供でも授業中の時間帯。
このおじさんは何の仕事をしているんだろう。

食べたいものを好きなだけ注文。
お昼を食べた直後なのに、沢山注文してしまった。
食べきれるのかなぁ。
そういえば、お会計とか食べれる量とか、時間帯とか、
すべて度外視で無計画で過ごすのは人生初めてなんじゃないかな。

でも店を見渡すと、おじさんおばさんが好き勝手に一品料理を注文し、盃を交わし合っている。
この空間は無計画を許してくれていた。

そういえば就業してた時、電車に揺られながら思ったことがある。
真昼間から無計画で暴飲暴食できたら、誰よりも贅沢な時間の使い方なんじゃないか。
いつか僕もそんな時間を過ごしてみたい。
一回だけでいいから。と。

世の中にはこんなにたくさん、そんな贅沢な時間を過ごしている人がいる。
今まで会社という狭い世界に閉じ込められ過ぎていたのかもしれない。
世界は広くて、人の数だけ幸せは形作られている。

いま、僕にとって夢のような贅沢な時間を、僕は過ごしている。
また一つ、夢が叶った。

億万長者とか、酒池肉林とか、特権階級とか、そんな大欲は必要ない。
小さく素朴な幸せを感じられ続ければ、それだけで充分幸せになれる。

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